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佐賀地方裁判所 昭和29年(行)5号 判決

原告 山本早雄

被告 佐賀県知事

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事実及び理由

第一、申立

原告の申立――「被告が発した昭和二十八年十月十九日附第一期分、同年十二月十四日附第二期分の各昭和二十八年度県税事業税督促状及び被告が訴外山本ナヲに対する昭和二十八年度事業税滞納処分として原告所有の現金千九百六十円を差押えた処分並びに被告がなした原告の右滞納処分異議申立に対する決定はいずれもこれを取消す。」との判決を求める。

被告の申立――主文同旨の判決を求める。

第二、当事者間に争のない事実

(一)  原告は毋訴外山本ナヲと共に菓子小売業を営む者で、同訴外人と連帯して事業税の納付義務を負うものである。

(二)  同訴外人は昭和二十八年十月八日、被告県知事にその昭和二十八年度事業税賦課(一期分金九百円、年額金千八百円)に対する適法な異議の申立をなしたところ、被告は右異議申立を却下し、同年十二月三十日附異議申立に対する決定通知書を発送し、該通知書は昭和二十九年二月十三日同訴外人に到達した。

(三)  そこで原告は昭和二十九年三月十二日佐賀地方裁判所に事業税異議申立に対する決定取消の訴を提起し、該訴訟は現に同裁判所に係属中である。

(四)  ところが、被告は右(二)の異議申立に対する決定もなされていない昭和二十八年十月十九日附、同年十二月十四日附でそれぞれ第一、第二期分の各事業税督促状を同訴外人宛発し、いずれもその頃同訴外人に到達した。

(五)  そうして被告は昭和二十九年三月五日、同訴外人に対する昭和二十八年度事業税滞納処分として原告所有の現金千九百六十円を差押えた。

(六)  そこで原告は被告に対し、同月六日右滞納処分に対して異議の申立をなしたが同年五月二十八日、被告は右異議を理由がないとする却下決定をなし、原告は同月三十一日右決定通知書を受領した。

第三、争点

原告の主張――人民の財産権を侵害する納滞処分は事業税賦課に対する異議の決定、又は事業税異議申立に対する決定取消訴訟の判決確定に至るまでは、これをなすことはできない。即ち地方税法第七百六十四条第十一項の異議申立又は出訴があつても事業税に係る地方団体の徴収金の徴収は停止しないというのは徴税令書による徴収は停止しないという意味で、人民が任意に納税するときは異議申立後又は出訴後でも徴収してよいと規定しているのみで、強制徴収たる滞納処分をなし得るという規定ではない。

然るに被告が、

(1)  滞納処分の前提となる昭和二十八年十月十九日附第一期分、同年十二月十四日附第二期分の各昭和二十八年度県税事業税督促状を同訴外人に発したこと。

(2)  昭和二十九年三月五日、同訴外人の右事業税滞納処分として原告所有の現金千九百六十円を差押えたこと。

(3)  同年五月三十一日、原告の右滞納処分に対する異議申立を理由がないとして却下決定したこと。

は、いずれも違法であるからこれが取消を求める。

被告の主張――事業税賦課に対する異議申立又は事業税異議申立に対する決定取消訴訟の提起があつても、事業税に係る地方団体の徴収金の徴収は停止しないことは地方税法第七百六十四条第十一項により明らかであるから、同法第七百六十五条、第七百六十七条国税徴収法第九条、第十条に基いて、本件滞納処分をなしたので何等違法はないし、従つて又滞納処分に対する異議申立を理由がないとした決定も違法ではない。

第四、判断

原告は、滞納処分は事業税賦課に対する異議決定又はその取消訴訟の判決確定に至るまでこれをなすことができないと主張する。

しかしながら地方税法第七百六十四条第十一項は、事業税賦課に対する異議の申立又はこれを不服とする出訴があつても、事業税に係る地方団体の徴収金の徴収は停止しないと明定している。この「徴収金の徴収」が納税義務者の任意の納付を含むことは勿論であるが、納税義務者が任意に納付しないとき、強制的に徴収すること(督促状による督促、更に滞納処分)を含むことも疑いの余地がない。強制徴収をなし得ないとすれば、この規定は殆んど無意味になるのであつて、むしろ強制徴収をなし得る根拠を明文化したものと解するのが相当である。何故なら通常賦課に異議をはさむ者が任意に不法不当と信ずる税を納付することを期待し得ないからである。従つて原告の右主張は全く独自の見解で採用することができない。しからば右の主張を前提とする本訴請求は爾余の判断をまつまでもなく失当である。

第五、結論

よつて原告の請求は、これを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担については、民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 岩永金次郎 富川盛介 小川正澄)

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